街に響くブレーキ音
そして・・・悲鳴。
女は頭から血を流し、抱き寄せる男が悲痛な叫びをあげる。
女を轢いた車の運転手はその惨状を唖然として見つめる。
しばらくして救急車が来た。
隊員によって女は担架に乗せられ運ばれていく。
男は悔やんだ。
ブレーキの瞬間彼は自らの身を引いた。
彼女を庇わずに・・・

「ああ・・・・」

ポツリとつぶやいた。

W I can't do it.


山奥にコテージのような一軒家があった。
一人で住むには少々大きいが中には少年がひとりしかいなかった。
外には換気扇から肉を焼く良いにおいが漂っていた。

「おっけ。」

そういうと少年はひざの辺りまであるサイズの合わないエプロンを気にしながらフライパンの上で綺麗な焼き色をしている肉を皿に盛り付けた。
・・・どうやら魚肉のようだ。
するとチャイムが鳴った。
客人を告げる音だ。
彼は面倒くさそうにエプロンを脱ぐと玄関に向かった。

「はい」

そうあまり面白くなさそうに言うと客人は

「お初に、それに突然すいません。お願いがあり参りました。」
「それなら他を当たってください。私は財も力もないただの子どもですから」

そういって断ろうとすると。

「ある人から聞いた。お前は天使なんだろ?」

少年は無言でうつむく。
そして聞こえないように舌打ちをした。
客人はさらに続けた。

「なんでもかなえられるんだろ?なぁ!?」
「・・・でしたら・・・なんですか?」

少年は迷惑そうに、不快感をあらわにしながら言った。

「女が死んだんだ・・・俺の・・・俺のせいで。」
「だったらご自分で罪をお償いください。」

客人は違うと首を振った。

「生き返らせて欲しいんだ。1日・・・いや1分でもいい。謝りたいんだ」
「嫌です」

素直に、そしてごく自然なことのようにきっぱりと言ってのけた。
驚きながらもさらに強く言った。

「頼む、金なら幾らでも払う。だからお願いだ。かの」
「あいにく独りですのでお金もそれほど必要としていませんし。」

彼が冷たくそう言うと次の瞬間ドアは三発銃弾の攻撃にあいドアが開いた。

「どうしても嫌だって言うんな・・・」

銃声。
そして彼の口と額の風穴もだらしなく開いたまま、閉じることはもう無い。



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