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高層ビルが立ち並ぶ都市。
その真ん中の予備校の帰り。
私は見つけた。
君が堕ちてくるのを。

夜の空に光があった。
星でも、月でもない神秘的な光が。
何かが浮いている。
人の形をしていた。
唯一背に翼を背負っていること以外は。
翼は黒かった。
血がくすんだ感じの。
そんな悲しい色。

私は一目散にその方向へ走った。
夢想(ゆめ)と思っていた天使の話。
そんなくだらないことが自分の身に起こるような気がして。

浮いていた。
川の上に。
都会の汚い川が、美しかった。
天使は川を歩いた。
上を、ゆっくりと。
一歩、二歩・・・。
そして私のほうを向くと倒れた。
と、同時に光が消えた。
あたりにはいつの間にか星が消えていた。


U 堕落

親は仕事で遅い。
今は8時だがもちろんまだ帰ってきていない。
いつもと殆ど変わらない留守電を聞いて冷蔵後のハンバーグと冷凍庫のご飯を温める。
ただ、唯一違うのは隣に「天の使い」がいること。
その「天からの使者」はすやすやと寝息をたて、まるで人間の子どものように見える。

「君はなんだろうね」

私は言った。
宿題をやりながらぽつりとつぶやいた。

「うーん、死神・・・かな」

予想外の声がした。
幼い、そしてかわいらしい声。

「起きてたの?」
「あ、驚かせちゃった?ゴメン」

堕天使は起き上がると頭をポリポリと掻いた。

「え・・・っと・・」

私は困惑した。
とりあえずつれてきてしまったがどうして良いかわからなかったから。

「問題。その死神を家に上がらせてしまった君はこれからどんな目に合うでしょう?」

突然の問題提起。
私は聞いたことのある話をした。

「魂を吸い取られる・・・とか?」
「・・・ピンポーン。」

一瞬の静寂。そして私は恐怖した。
この美しい笑顔の奥底にどんなにどす黒い感情をこの死神さんがもっているのか。

「なんてね。」
「へ?」

美しくも妖しげだった笑みは屈託の無いそれに変わった。

「ありがとう」
「あ・・・あ?」
「って言われる。なーんて。」

小悪魔は寝転がると上目遣いに彼女をみた。

「あ、いや。そんな・・・」

私は完全にパニックになっていた。

「でもさ〜なんで僕つれてきたの?警察とかは?」

そういえばなぜだろう。
気づいたときには連れて帰ってきてて。
とりあえずびしょびしょになった体を拭いてあげて。
・・・多分、つまらなかったからだろう。
正直私は今の世界に退屈していた。
くだらない。この世は腐ってると。
だからこそ現代の常識とか。
そんなものを全て無視したこの謎の生命体を連れて行ってしまったのだろう。
何かが欲しかったのだろう。
だが私は
「う〜ん・・・わかんないな。なんとなく」
といった。
この数秒でで大分落ち着いた気がする。

「そんなもんかな?」
「そんなもんだよ」

すると君はまた笑顔になった。
まぶしいくらいに。きれいだった。

「やっと笑ったね。」
「え?」

また予想外の言葉。
私をあわてさせることを楽しんでいるかのようだった。
ただ、あせりはなくなっていた。
私もそれを楽しんでいたから。

「なんでもないよ」

そういうと君は立ち上がった。
そしてドアのほうへ歩いていってしまった。

「どこ行くの?」
「どこって・・・行くんだよもう」

愕然とした。
確かに君がここにいたところで親が帰ってきて混乱するだけだ。
だからといって諦められなかった。
いや、諦めたくなかった。

「嫌だよ。」
「え?」
「嫌だ。どこにも行かないで。」

眼を見ていった。
ただ真っ直ぐに。一心に。自分の思ってることを。

「・・・無理だよ。」

それだけ言って彼は消えた。
ドアから出て行って。見てみたら。いなかった。
ドアの外には羽根が1つだけ落ちていた。
黒い、悲しげな羽根だった。




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